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FRBを「辛抱強く」するインフレ圧力の不在

「忍耐」であろうが、7つの美徳のうち他のどれであろうが構わないが、要するにインフレが存在しないのだから米連邦準備理事会(FRB)は利上げできないということだ。

FRBは17日、利上げについて「辛抱強くいられる」とし、これは「相当な期間」という文言を用いた従来の政策ガイダンスと同じ意味を持つと強調した。

イエレンFRB議長の記者会見はかなり率直な内容だった。今後2回の連邦公開市場委員会(FOMC)、つまり4月よ り前の利上げはないと。議長はFOMCの「参加者ほぼ全員」が2015年中の利上げを予想していると述べた。今回の政策決定に3人の委員が反対したことを 踏まえると、この見通しは確固たるものといえる。

しかし、それでは2015年のいつ利上げするのかという具体的日程となると、FOMCが開かれる度に先に延びているのが実情だ。トレーダーの予想はこれまで9月だったが、FOMCのハト派的な声明を受けて10月に後ずれした。

FRBが声明と併せて公表した経済見通しは、実際に何が起こっているのかを知る上で良い手掛かりになる。2015年 から17年にかけてのインフレ予想が1カ月前に比べてすべて下方修正された(エネルギー価格の急落に照らせば無理もない)だけでなく、長期的な見通しも 2.0%にとどまっている。

FRBは、賃金の上昇を原動力としてインフレ率が近い将来、目標の2.0%に戻るとは見ておらず、いわんや2%超えなど見据え ていないということだ。

この見通しは、石油価格の下落が一時的現象に終わるという観測に背くものといえる。

FRBの経済見通しを示すチャートにも目を向けよう。2015年の消費者物価指数(CPI)上昇率の予想中央値は1.75%から1.3%へと大幅低下し、17年分も1.95%から1.9%に下がった。

つまりFRBはインフレ上振れの脅威を感じておらず、逆に低過ぎるインフレ率が長期間続いて忍耐力を試されることを恐れているのだ。

FOMC声明では予想物価上昇率に対する言及があった。今後5年間の予想物価上昇率は急速に下がっており、人々の脳裏にディスインフレマインドが根を下ろすシナリオが浮かぶ。

<失業率下振れも看過>

FRBはまた、完全雇用を超える労働市場と根強い低インフレが併存すると予想している。FRBによる16年と17年の失業率予想は、長期的な「自然失業率」を下回っている。

イエレン議長によるとこれは「インフレ率がわれわれの目標を下回って推移しており、FOMCは将来的にこれを目標値に戻したい」ゆえであり、「失業率が短期間、非常にわずかに完全失業率を下回るなら、インフレ率を目標値に戻すスピードをわずかに速める効果がある」という。

議長は「最大雇用の定義がはっきりしない状況において、失業率の下振れは非常にわずかなものにとどまる」とも付け加えた。

インフレタカ派はこの発言を見て次のように結論付けるだろう。FRBはインフレ率を押し上げ、消費者のディスインフレマインドを払しょくするためには、多少の労働市場の過熱は看過する構えだと。

そうかもしれないが、次のような可能性も考えられる。すなわち就業を待機する人口が多いのに対し、創出される雇用は 非常に低賃金であるゆえに、「正常な」賃金上昇スパイラルが根付かない、という姿だ。本当に賃金が上昇し始めればFRBは素早く路線変更するだろうが、賃 金の力強い上昇を確信する理由は乏しい。

こうしたことを踏まえると、労働市場が堅調であってもFRBは間もなく、あるいは「相当の期間」、利上げできそうにない。

金融市場にとっての結論はずばり、リスクオンだ。株式市場は喜びに沸き、高利回り債やクレジット市場にさえ追い風が吹くだろう。FRBが近い将来、意図的にこれらの市場の価格を押し下げることはないのだから。新興国市場もまた、恩恵に預かる筆頭候補となる。

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